ひきこもり10年生のリスタート

ひきこもり歴10年が送る人生改革実験

子供の引きこもりを長期化させないために親はまず信頼獲得に取り組むべき理由

f:id:LeiraWestie:20200416160611j:plain


もしあなたに子供がいたとして、その子供が引きこもりになったらどう対処するだろうか?無理矢理にでも働かせる?家を追い出す?それとも好きなようにさせる?

これは非常に難しい問題だし、正しい答えは無いと思う。

 

この問題に対して、10年以上引きこもっている俺から一つの意見を述べてみようと思う。俺の経験から思うのは、まず親は「信頼獲得」から始めるべきじゃないかということだ。なぜなら「親子の信頼関係」こそが、引きこもり問題の解決に最も必要だと思うからだ。

 

俺は、自分の引きこもりが長期化した原因として、親子の信頼不足とコミュニケーション不足があると思ってる。そしてこれは、他の多くの引きこもりにも当てはまるのではないだろうかと思う。

 

なので今回はそんな俺の事例から、「引きこもりの親がどうやって子供と向き合うべきか」を考えてみようと思う。

 

俺が引きこもった時の話

これは俺がひきこもりになった時の話だ。

 

俺が引きこもりになったのは不登校が始まりだった。不登校になったのは本当に些細なきっかけで、確かめんどうな仕事を無理やり押し付けられたことだったと思う。もちろんこれはきっかけにすぎず、不登校になった原因はそこではなかった。

 

学校では友達もおらず、受験のストレスと持病で精神がボロボロだった。ずっと苦しみながらも学校に行き続け、早くこの状況から逃れたいと思って過ごしていた。本当にいっぱいいっぱいだった。そして何年も積み重ねたものが、ちょっとしたきっかけで一気に爆発してしまったのだ。

 

親にもう学校にはいかないことを伝え、不登校になった。俺の親の反応は、「そんなことで学校いかないの?」とか「じゃあ押し付けられた仕事やらなければいいんじゃない?」とかだった。きっかけが本当に些細だった分、周りからしたら「ただ楽をしたい学生の甘え」に見えたのだろう。本当は、長年積み重なった苦痛によるものだったけど、それは説明のしようがないから誰にも理解されなかった。「今学校やめるとね、将来の就職が難しくなるんだよ」とも言われた。「そんな正論言われても、今の俺には無意味なんだけどなあ」と、当時の俺は聞く耳を持たなかった。

 

そしてある日、父からこんなことを言われたのを今でも覚えている。

「お前が選んだ学校なんだから、最後まで行くのが責任でしょう?」

意味がわからなかった。

 

俺が選んだ学校?別に行きたくてこの学校入ったわけじゃないけど?じゃあ仮に俺が学校に行かない選択をしていたら、行かなくて良かったということ?というか不登校の話と、選んだうんぬんの話って全然関係ないよね?

 

からしたらただの屁理屈にしか聞こえなかった。その意味不明な屁理屈で、この問題が解決すると思ったのだろうか?おそらく、父はなんとか説得をしたくて、苦し紛れにあの意味不明な発言をしてしまったのだろう。俺はこの発言を聞いた瞬間に、「あぁ、この人は俺のことを理解しようとしてくれないんだな」と確信した。親は、俺の気持ちを理解することよりも、とにかく学校に戻すことに必死だったのだ。この言葉はあまりにも衝撃的だったので、今でも忘れない。

 

さらに親は、とんでもない事をしてきた。家に教師を呼んだのだ。もちろん俺は知らされておらず、いきなり「先生が来たから話しなさい」と言ってきた。俺はパニックになって、ドアを開けられないようにずっと押さえていたと思う。先生は部屋の前でずっと呼びかけてきたが、俺は全く応じなかったので結局諦めて帰っていった。

俺はもう誰とも話したくなかったし、とにかく逃げたかったのだ。そんなことも知らずに、唯一安心できる場所である自宅に教師を招くなんて、俺には全く理解できなかった。

 

このことが決定的になり、俺は親への信頼を完全に失った。だから、自分で自分の身を守るために、出来るだけ親と関わらないように避けて生活するようになった。親に話しかけられても徹底的に無視し、親に提案されたことはどんなことでも即拒否していた。

 

そうしているうちに、俺の親はもう諦めてしまったのか、何も言わなくなった。

 

そして気づいたら、10年がたっていた。一瞬だった。親に何も言われなくなった俺は自由な生活を手に入れ、そして、もう取り返しがつかない所まで来てしまったのだ。

 

俺の事例から学べること

以上が俺が引きこもりになった時の話だ。俺の事例からは、いくつか学ぶべきポイントがあると思う。そのポイントをまとめてみよう。

 

「親に理解」と「子の不信感」

まず、子供は親がどれだけ自分を理解してくれているかで愛情を測る。子供にとって、親は唯一の理解者であり、助けを求められる存在だ。親に理解をされないというのは子供にとって一番つらいことなのだ。

 

俺の例でいうと、子供の立場になってみて考えれば、家に教師が来ることがどれだけ辛いかは分かるはずだ。なのに教師を招き入れるもんだから、「俺の気持ち理解してくれないんだね」となってしまう。

 

子供はそうやって、親に理解されてないことを敏感に感じ取る。そして理解されないと判断した瞬間、自分を守るために親の言うことを一切聞こうとしなくなる。

 

コミュニケーションをしっかり取って、今後について話し合いたいならば、まずは信頼されなければいけない。親が自分の意見を押し付けているうちは、いつまでたっても信頼されないし、子供が心を開くこともない。

 

道を外れることを嫌がる親

俺が思うに、多くの親は子供に「正しい道」を歩ませたがる。正しい道というのは、ちゃんと学校に行って、ちゃんと勉強もして、ちゃんと就職して、結婚もして、というような理想的な人生だ。それを子供に望むのは、親として正しいことだとは思う

 

ただ、そんな道を歩めるのは運が良いごく一部の人間だ。問題は、子供が正しい道から外れそうになったときに、親が無理やり戻そうとすることにある。親は、正しい道以外の人生を猛烈に嫌がるのだ。親が考える正しい道こそが子供にとっての幸せだと思ってしまい、「正しい道」か「そうじゃないか」の2択でしか考えられず、「第3の道を探してみる」という思考が出来ない。だから、子供の意向を無視した行動を取ってしまうのだ。

 

俺の親も、学校に戻すことばかり考えていたのだろう。だから、屁理屈を使ったり、教師を使ったり、何がなんでも学校に戻そうとして、それが俺をさらに苦しませ続けていた。親が元の道に戻そうとすればするほど、子供は抵抗し、もっと遠くまで逃げようとするのだ。

 

そして最終的に、自分の望む道が無理そうだと悟った親は、子供のことを諦める。別の道を探るわけでもなく、「正しい道に戻れないなら放置しましょう」と考えるのだ。

 

信頼関係の欠落がもたらす引きこもりの長期化

信頼関係も失い、親にも諦められた引きこもりは、長期化の道をたどることになる。

 

一度信用を失った親は、なかなか取り戻すことは出来ない。俺は10年経った今でも、親に対する不信感が残り続けている。親に対する申し訳なさはあれど、自分の本音をぶつけて話し合おうとは一切思わない。だって、どうせまた理解されないのは分かっているから。

 

このような状態になった親子は、コミュニケーション不足に陥る。親は何も言ってこなくなるし、子供も何も喋ろうとしない。

 

それで子供はどうなるかと言うと、何もやらなくなる。自分の意志で頑張ろうとか、別の道を探ろうとか、そんな意識の高い引きこもりなどほとんどいない。ただ波風が立たないように、「平和な日常が続いてくれ」と思いながら過ごすのだ。

 

そして何も解決することが出来ないまま時間が過ぎていき、気づいたら「人生が詰んだ長期引きこもり」が完成するのだ。

 

引きこもりの親が取り組むべきこと

これらのことを踏まえた上で、「じゃあ親はどうすればいいのだろうか?」ということを考えてみよう。

 

道を外れることに納得する

まず、大切なのは「まず親自身が諦めること」から始めることだ。諦めるというのは、子供の将来を諦めるということではなく、「正しい道に戻すことを諦める」ということだ。これだけで子供は一気に気が楽になるし、親に理解されてると感じるようになる。

 

親の気持ちとして「普通の子供」にこだわるのも分かるが、その気持ちが子供のプレッシャーになる。だから、「まあこうなったのはしょうがないよね。何か違う生き方考えようか」という態度になることで、子供は開放されるのだ。

 

別に道が外れてもいいじゃないか。新しい道を作っていけばいいじゃないか。結局人生なんて、成功者になれなくても、幸せになれればいいじゃん?

 

子供の立場になって理解する

そして次に、「理解者であること」を示すことだ。子供の立場になってみて、「なにで苦しんでいるのか」とか「何だったら出来そうか」を理解しようとする。「自分の願望を押し付けようとしてないか?」と自問自答してみる

 

そして、子供にとっての唯一の理解者であり味方であるという姿勢を示すのだ。それが伝われば、子供は親を信用するようになり本音で話すようになるだろう。信頼関係さえ保てていれば、コミュニケーションが取れるようになり、いろんな可能性が生まれるのだ。

 

出来そうなことを見つけてあげる

そして信頼関係が出来たら、子供が歩めそうな新しい道を提示してあげる。「今のあなたならこのぐらいは出来そうじゃない?」と、小さな所から改善していくように促すのだ。子供だってこのままでいいとは思ってないし、なんとかしなくてはいけないと思っている。でも何をやっていいかが分からないから、親がそれを見つけてあげるのだ。

 

 「学校に行きたくないなら、家でどうやって勉強しようか」とか「太ってるのがコンプレックスなら、ダイエットしようか」とか「精神的に辛いんだったら、病院行ってみようか」みたいに、とにかくやれそうなことを話し合ってみる。

 

前に「引きこもりにできそうなこと」を俺が記事にまとめたのでそれを参考にしてもらってもいい。

 

怠けさせてはいけない

俺が長期間引きこもって後悔してるのは「引きこもりになったこと」ではなく、「何もしない引きこもりになってしまったこと」だ。10年間頑張れてたら、今頃どんだけマシな人生を歩めてただろうかと何度も考えてしまう。

 

だから重要なのは、改善できそうなことを繰り返し提案することで、子供が怠けないように導いてあげることなのだ。引きこもりは引きこもりでも、「何かしら努力している引きこもり」にしなければいけない。

 

子供を理解してあげるというのは「自由にさせる」という意味ではない。子供の自主性に任せてやりたいことだけやらせるのはよくない。何も言われなくなった子供は、努力しなくなり快適な生活を謳歌しだす。親がちゃんと見張って、怠けだしたらそれを戻してあげなければいけない。

 

諦めないこと

そして一番重要なのは諦めないことだ。この子はもうどうしようもないと諦めた瞬間に望みは消える。親が諦めると子供はすぐそれに気づく。だから諦めずに、とにかく子供のためになりそうなことを提案し続けるのだ。

 

小さいことでもコツコツ積み重ねていくことで、子供は「普通の人」に近づいていくのだと思う。

 

さいごに

俺の経験から、親が取るべき行動をアドバイスしてみた。「子供を理解すること」は簡単そうに見えて、意外と出来てない親も多いのではないだろうか?一度自問自答してみるといいかもしれない。

 

もちろん、引きこもりも多種多様なので、俺の考えが一番いいのかは分からない。ただ「子供はこういうことを考えているんだよ」ということが伝わっていればいいなと思っている。

 

この記事では親を責めるような事をたくさん書いてしまったが、俺の親は別に悪い親ではないということは言っておく。むしろ俺は家庭環境にはとても恵まれているし、自分がこんな状態になってしまったことは、自分の甘さが原因だとも思っている。

 

しかし一方で、引きこもりの立場から見て、親がこうしていればもっと状況は良くなっていただろうなと感じることもあった。だから、引きこもりで悩んでる親たちの助けになるかなと思い、この記事を書いてみた。少しでも参考になったのなら幸いだ。

 

みなさんの悩みが解決することを祈ってます!それでは!